フリーランスや個人事業主になると、毎年 2〜3 月に確定申告(1 年分の収入と税金を国に報告する手続き)をします。 その申告には「青色」と「白色」の 2 種類があり、選び方で払う税金が数万〜数十万円変わることがあります。
ネットを見ると「青色が絶対お得」と書かれがちですが、実はそうとも限りません。この記事では、国税庁の公式ガイドをもとに、あなたの収入レベルで青色と白色どちらが向いているかを、具体的な金額で判断できるようにまとめました。 青色を使うには事前の届出が必要なので、下のツールで自分に必要な届出をあわせてチェックできます。
💡 「青色が絶対お得」は半分しか正しくない
青色申告の最大の特典は「最大 65 万円の控除」です。控除とは、税金を計算する前に収入から差し引ける金額のこと。 つまり、65 万円分の収入がなかったことにできるので、その分だけ税金が安くなります。
ただ、ここで大事なポイントが 2 つあります。
- 65 万円まるまる税金が安くなるわけではない— 実際に減る税金は「65 万円 × あなたの税率」です。税率は収入が低い人は低く、高い人は高い。 つまり収入が少ない人ほど節約できる金額も小さくなります。
- 青色にするには「帳簿をきちんとつける」という条件がある— 会計ソフト代(年 1〜2 万円)や、簿記を少し勉強する時間も必要です。 売上が小さい初年度だと、このコストのほうが節税額を上回ることもあります。
この記事のスタンス
「青色か白色か」は、あなたの収入・事業のフェーズ・帳簿をつける余裕で変わる問題です。この記事では、具体的な数字で判断軸を示し、白色を選んでも問題ない人のケースもきちんと説明します。
🧮 収入別にみる、青色申告で減らせる税金の目安
実際にどれくらい税金が減るのか、3 パターンで見てみます。所得とは収入から経費を引いた金額のこと。たとえば売上 500 万円で経費が 200 万円なら、所得は 300 万円です。
以下は、青色申告の最大控除(65 万円)を使えた場合の節税額の目安です。
| 所得水準 | 税率(所得税+住民税) | 節税額 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 低所得・所得 300 万円 | 合計 約 20% | 約 13 万円 | 所得税 10% + 住民税 10% |
| 中所得・所得 600 万円 | 合計 約 30% | 約 19.5 万円 | 所得税 20% + 住民税 10% |
| 高所得・所得 1,000 万円 | 合計 約 43% | 約 27.9 万円 | 所得税 33% + 住民税 10% |
※ 家族構成や他の控除で実際の金額は変わります。ざっくりした目安と思ってください。
所得 100 万円以下の副業レベルは、節税額(数万円程度)が簿記の勉強時間(約 10 時間)+会計ソフト代(年 1〜2 万円)と釣り合わないことも。 収入が増える見込みがあれば早めに青色にしておく方が得です。
🎯 自分はどっち向き? チェックリスト
節税額だけじゃなく、事業のフェーズ・帳簿をつける余裕もあわせて考えるのがコツです。当てはまる数が多い方を選べば OK。
✅ 青色が向いている人
- 年間所得 300 万円を超える(節税額 13 万円以上で、勉強コストを十分に上回る)
- 2 年以上は事業を続けるつもり
- 会計ソフト(弥生・freee・マネーフォワードなど)を使える
- 家族に仕事を手伝ってもらう予定がある
- 赤字になる可能性がある事業(赤字を翌年以降に持ち越せる)
- 10〜30 万円の機材・パソコンをまとめて買う予定
⚪ 白色で十分な人
- 🌱 副業レベルで売上が小さい
年に 100 万円以下しか稼いでいないなら、節税できる額より帳簿をつける手間のほうが大きいかもしれません。
- ⏰ 申請書の期限に間に合わなかった
青色を使うには 3/15 までに届出が必要。過ぎてしまった場合は、今年は白色にして、来年から青色にする選択もごく普通です。
- 📚 簿記を勉強する時間がない
会計ソフト(年 1〜2 万円)を使っても少しの勉強は必要。どうしても時間が取れなければ、無理せず白色でも大丈夫です。
🔍 控除額は 65 / 55 / 10 万円の 3 段階
「青色申告=いつも 65 万円」ではなく、満たす条件によって65 万・55 万・10 万の 3 段階に分かれています。 条件が多いほど控除額も大きくなる、ゲームのレベル制みたいな仕組みです。
65 万円
- 複式簿記で記帳
- 貸借対照表 + 損益計算書を添付
- 期限内申告(原則 3/15 まで)
- さらに「e-Tax 電子申告」or 「電子帳簿保存」のどちらか
55 万円
- 複式簿記で記帳
- 貸借対照表 + 損益計算書を添付
- 期限内申告(原則 3/15 まで)
- ※ 紙提出のみ(電子対応なし)
10 万円
- 簡易帳簿で OK
- 現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳
- 複式簿記は不要
- 青色申告者でこれ以外の要件を満たせない場合の最低保証額
参考: 国税庁 No.2070 青色申告制度
🏠 控除だけじゃない、青色申告の 3 つの特典
65万円の控除以外にも、青色申告には嬉しい特典が3つあります。
特に赤字を3年間持ち越せるのは、事業を始めたばかりの人にとって大きな味方です。 たとえば今年400万円の赤字が出ても、翌年以降の利益で少しずつ取り崩せます。
📁 帳簿のつけ方、どう違う?
青色申告(65・55 万円コース)には「複式簿記」という帳簿のつけ方が必要です。ざっくり言うと、お金の出入りを「現金が減った」「売上が増えた」の 2 つの面からセットで記録する方法のこと。最初は難しく感じますが、会計ソフトを使えばほとんど自動で、銀行口座やレシートを取り込むだけで形になります。
| 項目 | 白色申告 | 青色申告(65/55 万) | 青色申告(10 万) |
|---|---|---|---|
| 記帳方法 | 単式簿記(簡易) | 複式簿記(仕訳 + 元帳) | 簡易帳簿 |
| 必須帳簿 | 収入・経費の記録 | 仕訳帳・総勘定元帳 | 現金出納帳・売掛帳 等 |
| 決算書類 | 収支内訳書 | 青色申告決算書(BS+PL 必須) | 青色申告決算書(簡易) |
| 帳簿保存期間 | 帳簿 7 年 / 書類 5 年 | 帳簿 7 年 / 書類 5 年 | 帳簿 7 年 / 書類 5 年 |
| 会計ソフトの必要性 | 任意 | 実質必須 | 任意 |
※ 2014 年から、白色申告でも記帳・保存が義務になっています。 「白色だから適当でいい」は過去の話です。
🗺️ 青色申告を始める 4 ステップ
STEP 1. 届出の期限を確認する
- すでに事業をしている人: 青色にしたい年の 3 月 15 日までに届出を出す
- これから開業する人(1 月 16 日以降に開業): 開業日から 2 ヶ月以内
- ※ 親の事業を受け継ぐ場合など、特殊なケースは税務署に確認を。
STEP 2. 「青色申告承認申請書」を税務署に出す
これを出さないと、今年はどれだけ頑張っても青色特典はゼロ(自動で白色扱い)になります。 国税庁のサイトから用紙(PDF)をダウンロードして記入し、税務署に持参・郵送・または e-Tax(オンライン申告システム)で提出します。 他に必要な届出があるかは、下の届出チェッカーでまとめて確認できます。
STEP 3. 会計ソフトを用意する
弥生・freee・マネーフォワードなど、年1〜2万円で使える会計ソフトを入れておけば、帳簿はほぼ自動で作れます。 65万円の控除をもらうには「e-Tax で申告」か「電子帳簿保存」のどちらかが必要なので、対応したソフトを選びましょう。
STEP 4. 翌年2月16日〜3月15日に確定申告する
1年が終わったら、会計ソフトで作った書類(青色申告決算書と確定申告書)を e-Tax で送信するだけ。期限を1日でも過ぎると10万円控除に格下げされるので、期限は絶対に守ってください。
❌ 「青色にしたつもり」でも、減額される 3 つの失敗
青色申告は強力な制度ですが、ルールを守らないと特典が受けられません。 よくある 3 つの失敗パターンを押さえておきましょう。
① 申請書の出し忘れ・出し遅れ
青色を使いたい年の 3 月 15 日までに「青色申告承認申請書」という書類を税務署に出す必要があります(開業したばかりなら、開業日から 2 ヶ月以内)。 出し忘れると、その年は自動的に白色になります。
② 会計ソフトの使い方を間違えて、10 万円に格下げ
帳簿を正しい形式でつけていないと、65 / 55 万円の控除ではなく10 万円になります。会計ソフトを入れていても「科目を間違えて適当に入力」だと認められない場合があります。
③ 3 月 15 日を過ぎて申告した
申告期限を 1 日でも過ぎると、65 / 55 万円の控除は使えず 10 万円に減らされます。さらに「期限に遅れたペナルティ(加算税)」も発生するので、期限は絶対に守りましょう。
✨ まとめ
① 節税できる金額は、収入が多いほど大きくなる— 所得 300 万円で約 13 万円、600 万円で約 20 万円、1000 万円で約 28 万円が目安。
② 控除額は 65 万 / 55 万 / 10 万の 3 段階— 複式簿記で記帳+決算書を添付+期限内に申告+電子対応、の全部を満たすと満額の 65 万円。
③ 白色を選んでも問題ない人もいる— 副業レベル・低所得・帳簿に時間が取れない場合は、無理せず白色 → 来年から青色でも OK。
④ 青色にしたい年の 3 月 15 日までに届出を出す— (開業したばかりなら開業日から 2 ヶ月以内)。出し忘れるとその年は白色に自動決定。 開業と同時に届出を出すのがおすすめです。
🗣️ この記事とツールを作った理由
私が個人事業主になった最初の年、「青色か白色か」で 1 週間ぐるぐる悩みました。 ネットの記事はどれも「青色が絶対得」と書いてあるのに、複式簿記の解説を読むと 仕訳帳・総勘定元帳・貸借対照表…専門用語だらけで、自分にできるのか全く自信が持てなかったからです。
結局、会計ソフト(弥生のクラウド版)を契約し、簿記 3 級の参考書を 1 冊読み込んで青色を選びました。 初年度の節税効果は約 18 万円。ソフト代 2 万円と学習時間 15 時間を差し引いても 十分ペイしました。ただ、もし私が副業レベル(年収 100 万円以下)だったら迷わず白色を選んでいたと思います。
ネット記事の「青色が絶対得」は、前提条件を省いた結論です。 この記事は、自分の収入レベルと事業フェーズで判断できるよう、数値と判断軸を揃えました。承認申請書を含む開業時の届出を漏れなくチェックするツールも用意しています。「何を出せばいいか分からない」をゼロにするのが目的です。
🛠️ 関連ツール
本記事の内容を実務で活かすためのサクッとツール 3 つ。
免責事項: この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別のケースの税金判断を保証するものではありません。 実際に申告や届出をするときは、最新の国税庁の情報を確認したり、必要に応じて税理士さんに相談してください。 記事中の数値・条件は、令和 7 年 4 月 1 日時点の法令にもとづいています。